小さな水漏れを放置していると大変なことに!

最初は「あれ、何だろう?」というくらいの出来事だった。私には小学校時代から仲の良い親友がいるのだけど、最近親友の様子がおかしいのだ。話をしていても、いつもだったら二人で大笑いするような会話なのに親友が突然押し黙ってしまったり、沈黙の時間が長かったり。大学受験を控えて疲れているのかな、私は推薦で進路が早々と決まってしまったけれど、親友はこれからが本番だしな。そっとしておいてあげた方がいいかも。――なんて思って放置してしまったのが間違いだったんだ。私の抱いた小さな違和感を、その時点でどうにかしていればよかったんだ。もう、後悔しても遅いけれど。

親友は恋をしていたらしい。相手は同じ学年の男の子で、私と同じバスケ部に所属している。彼は男子部のキャプテン、私は女子部のキャプテンということもあり、部活のことでよく話すことはあったけれど、まさか私と彼が付き合っているという噂があるなんて思ってもみなかった。「○○(私のこと)はいいね。○○くん(彼)ともうまく行ってるみたいだし、もう進路だって決まってるんだから、浮かれてても大丈夫だもんね」その会話を最後に、親友は完全に私を避けるようになってしまった。誤解なのに…。ちゃんと話を聞いてほしいのに…。だけどもう何を言っても、親友とは昔みたいには戻れないと思う。

落ち込んだまま帰ったら、母が台所のシンク下の扉を開けてしゃがんで座っていた。「どうしたの?」と聞くと、「なんかねー、水漏れしちゃってるみたいなのよ。まあ、まだ大したことないから大丈夫だと思うけど」「それ、早く直した方がいいよ」「え?」母が私に何か言うのを背中で受け流しながら、私は二階にある自分の部屋へと戻って行った。――早く直した方がいいよ。小さな水漏れだって、放置していると大変なことになるんだから。私は部屋に飾ってあった1つの写真立てを、そっと伏せた。